満月の夜に

 

「来たよ来た、来ましたよ〜♪」
 リックが上機嫌にバルダのテントにやってきた。
「お前なんか来ても嬉しくないぞ、馬鹿オヤジ。」
 以前拾った豹の少年−名をウィリアムというらしい−が険悪な表情でリックをにらみつけた。
「へ、ガキはなんとでも言ってな。今の俺様は上機嫌なのさ。」
 にーっといやらしい笑みを浮かべながらわざと力をこめてウィリアムの頭をぐりぐりと撫でる。
「どうしたリック、頭でも打ったか。」
 リックの方を向くこともなく、バルダはたずねた。
彼と義弟のカイ、それに先ほどまではウィリアムも狩用の矢を作っていた。
「バルダ・・・。お前まで何言ってんだよ。ついに来たんだぞ、この日が!」
「・・・そうか。もうそんな時期か。」
 バルダはリックの言ってることが思い当たったらしいが、それでも手を休めることなく相槌を打つ。
「リックさん、来たって何が来たの?」
 話の主軸が見えないカイは作業の手をとめてリックにたずねた。
リックはにやり、と笑うとカイの頭を撫でてやる。
「そういやお前も今年から参加だろ。よかったじゃねえか。」
「・・・何が?」
 いまだにカイには話の筋が見えない。
「発情期だよ。雌達に発情期が来たんだ!」
 そう言ってリックは雄たけびをあげた。
そう、この次期はまさに女性達の発情期であった。
基本的に一年中発情している男性に対して、女性は妊娠の都合などもあり年に一度しか発情しない。
それでは無駄に暴行などが起こってしまうと考えた先人達は村を二つに分けることにした。
その二つの村が年に一度だけ交流する、それが発情期の夜だった。
「いやあ、長かったよなあ一年。この日が来るのをどれだけ待ち望んだか、わかるか?
カイ、お前にわかるのか!?」
「あんまり・・・。」
 もはや誰にもついていけない勢いでリックはまくし立てる。
カイは話し掛けた手前もあって適当に相槌を打つしかなかった。
「落ち着いてる場合か、バルダ?今騒がずにいつ騒ぐ!さあ騒げ、わめけ、狂喜乱舞だ!」
「私は関係ないぞ。」
 ハイテンションでまくし立てるリックにバルダは作業を続けながら冷静に答えた。
「・・・へ?」
「副村長だからな。この村に残る。」
 先ほどまでの勢いは何処へやら、リックはあっけに取られた顔で立ち尽くす。
「・・・どうしてバルダさんは関係ないワケ?」
 この村に詳しくないウィリアムがたずねる。
「基本的にはこの村の大人たちが全員参加の祭りではある。
だが、大人が1人もいなくなっては無用心だろう?
だから副村長の私が残るんだ。」
「あー・・・。」
 リックが今思い出したかのようにうめいた。
「そこの馬鹿置いていったらいいじゃん。」
 ウィリアムがリックを指差しながら言う。
「その馬鹿だけならともかく・・・。
特定の1人を毎年置いておくわけにはいかないし、持ち回り制にすればやはり不満が出る。
かといって村長を置いていくわけにはいかない。
村長は村でもっとも優秀な男だからな。
そんな男の子孫を絶やすわけにはいかないんだ。
だから副村長である私が残る。これが慣習なんだ。」
 そう言ってバルダは小さく溜息をついた。
「お前ら2人でヒトのことを馬鹿呼ばわりしやがって・・・。
まあそれはともかく、そういやお前今年から副村長やってるんだよなあ・・・。
そっか、お前いけないのか・・・。」
 リックはばつが悪そうに後頭部をわしわしとかきながらテントから出て行った。

 


「ザックー!」
 カイが大きな声で友人の後姿に呼びかけた。
ザックもカイ達の姿に気づき手を振っている。
「ようカイ、やっぱお前も来たんだな。」
 日が暮れる前、村の大人たちは女性達の村へ向かって出発した。
カイとザックはその道程で顔を合わせた。
「で、なんでお前もいるんだ?クソガキ。」
「うるせえスケベオヤジ。」
 リックとウィリアムは敵対心丸出しでにらみ合う。
「ウィル、そんなことしてないでさっさと行こうよ。」
 義兄に似て苦労性なカイはリックと喧嘩するウィリアムの手を引っ張ってザックのところまで歩いていく。
「なんで俺が三バカの面倒みなくちゃいけないんだよ・・・。」
 リックは大きな溜息をついた。
ザックとカイとウィリアムは皆ほぼ同い年で、この中では最年少である。
場合によってはこの三人の世話を見なければならないのだ。
『祭り』が楽しめるとは思えない。
ふとカイの後ろ姿に話し掛けた。
「カイ、あいつホントに来ないつもりなのか?」
「え?たぶんそうだと思うけど・・・。」
 カイはザックたちとの会話を打ち切って答える。
「んー・・・。カイ、ちょっと耳かせ。」
 リックはカイの耳をつかんでそこにささやく。
「・・・・から・・・・・・に・・・して・・よ。」
「う、うん。」
 思わず赤面するカイの頭をリックはぐしゃぐしゃと撫でた。
整えたタテガミが乱れたのをいやがり、カイはタテガミをなでつけた。

 

 

「村長、ご機嫌いかがですか。」
 村に残ったバルダは、病気で床に伏せっている村長の下を訪れていた。
バルダの声にも村長の返事はない。
昏睡が続き、最近は目を覚ましていない時間が断然多くなった。
バルダは小さく溜息をつきながらも報告を続ける。
「今夜は『祭り』の夜です。皆女性達の村へ赴きました。
本当なら村長にも向かって欲しかったのですが・・・。」
 バルダは苦笑しながら報告を済ませると礼にのっとってその場を後にした。
村長のテントからでると東の空に満月が浮かんでいる。
月の光はまだ弱いものの、暗い空にその存在感を主張するには十分な光だった。
バルダはしばらくの間月を見つめつづける。
すべての子供達が寝付き、大人たちが出かけた村の夜はとても静かだった。
やがてバルダはゆっくりと自分のテントへと戻る。
「よう。」
 そこには『祭り』へ向かったはずのリックがいた。
「お前・・・なんで・・・『祭り』・・・」
 予想外の出来事にバルダは文法がめちゃめちゃなまま単語を並べる。
勝手に1人で食べ物を食べていたリックはそれを飲み込んでにやりと笑った。
「親友のお前おいていけるわけないだろ?」
「リック・・・。」
 リックの予想外の言動にバルダは思わず感動する。
さすがのバルダも1人で夜明けを待つのは寂しかったのだ。
「ま、そういうわけだからさあ・・・。」
 そういうとリックはバルダの腕をつかんで、自分の腕の中にひきずり倒した。
「相手はしてもらえるんだろうな?」
 そう言ってバルダが返答する前にくちづけをした。
「んっ・・・。」
 突然の行動にバルダも抵抗せずに受け入れる。
リックの手がバルダの股間をズボンの上からなで上げた。
それに反応するようにバルダの体がびくん、と震える。
唇を解放せぬまま、リックはバルダのズボンを脱がせると尻に手を伸ばした。
リックによって使い込まれたそこは彼の指をすんなりと受け入れる。
それだけでバルダの竿に血が通い、息があらくなる。
リックはすぐに二本目の指を入れると、指の動きを休めぬまま口を離した。
「リッ・・・ちょっと・・・まて・・・。」
 だがリックの動きは止まらない。
バルダを仰向けに転がすと、尻に指を入れたままバルダのモノを口の中に含んだ。
「うわあぁぁぁ・・・。」
 リックの舌にはなれているはずなのに、バルダの口からは声が漏れてしまう。
ぴちゃぴちゃという音と、バルダの喘ぎ声がテント内にひびく。
「はっ、あっ、リック!や、やめて・・・」
 その声に反応するようにリックはバルダに対するあらゆる刺激をとめた。
「あ・・・?」
 十分に昂ぶってきたところで解放され、バルダは肩透かしをくらったような気分でリックを見つめた。
「あんまり我慢できねえんだよ。」
 そう言ってリックはズボンから大きく怒張したモノを取り出すとバルダを抱えあげ、
向かい合いって座るような形でバルダの尻に自分のモノを静めていく。
「はああぁぁぁっ」
 バルダの口からさらに大きい声があふれ、股間の竿もびくびくと振るえながら透明な汁を撒き散らす。
根元まで入ったのを確認してリックは一休憩いれるように動きを止めた。
「バルダ・・・いいか?」
「ああ、いいっ」
 バルダが答えるときに、内部でリックは自分を思い切り動かしてやる。
それだけでバルダは感じているようだった。
リックはそんな表情にたまらなく欲情し、彼の鼻の頭を舐めてやった。
「リック・・・私は・・・村の見回りを・・・。」
 息も切れ切れにバルダは必死でそれを伝えた。
早く終わらせてくれ、というつもりで言ったのだ。
だがリックは違う意味に捉えた。
「そうか、そうだったな。じゃあ行くか。」
 リックはバルダに挿入したまま、両足を脇に抱え込むと立ち上がる。
「ひゃあっ!」
 そのゆれがバルダに言い知れない快感を与える。
だが、それも序の口だった。
リックはさらに、テントの外へと歩みを進める。
一歩進むたびにその振動がバルダの最奥へ伝えられる。
バルダは快楽で気が狂いそうだった。
「りっく・・・やめ、やめ・・・」
 よだれを垂らし、ゆれる肉棒から大量の露をたらしながらバルダは必死にリックにしがみついた。
「ほら、外だぞ。」
 バルダを抱えたリックは、いつのまにかテントの外に立っていた。
「見回りいくかー。」
 そういってリックは腰をふりながらゆっくりと村の中を徘徊する。
「ひゃっ、ひいっ!りっくぅ!!」
 必死でリックの名前を呼ぶバルダ。
一歩ごとに振動が、そしてリックがゆする腰がバルダを狂わせる。
涙やよだれ垂らしながらバルダはただイくことだけを望んでいた。
だが、両手はリックの体をつかむのに必死で自分の肉棒に刺激を与えることは出来ない。
「んー、異常なしかな。なあ、バルダ?」
 自分にも伝わってくる快楽をなんとか抑えながら、できるだけ冷静にリックは見回りをする。
自分が冷静なほうがバルダが恥辱にまみれ、快楽に落ちることを彼はよく知っていた。
「なあ副村長さん、仕事はどうしたんだよ?」
 イジワルな笑顔で彼は問う。
「そんなことより・・・、もう、イきた・・・リック・・・イかせて・・・。」
 バルダは必死で懇願した。
彼の頭にはもうイくことしかなかった。
そんなバルダをみてリックは充足感を感じた。
もっと貶めることはできる。
が、バルダはそれを望まない。
リックはバルダに口付けると、そのままの態勢でさらに激しく腰を振り出した。
「んんっ・・・」
 バルダの体が快感に震え、その先端からはさらに大量の先走り液がたれ落ち彼の毛皮を汚す。
「んはっ!リック!もう、もうイく、イくっ、イくっ!!!」
 村中に響き渡るような声でバルダは叫び、二人の間で大きくはじけた。
2人の毛皮がバルダの体液にまみれていく。
リックはいまだ達せぬまま、バルダの中から引き抜いた。
バルダをゆっくりと地面におろしてやる。
半分放心状態のままでもバルダはリックにしがみついたままだった。
しばらく2人は村の中心で抱き合う。
やがバルダが口を開いた。
「リック・・・させてくれ。」
 バルダがリックのものに手を伸ばす。
リックは無言で上体をバルダから離すと、腰を突き出した。
リックのものが、今度はバルダの口の中へと侵入していく。
咥えなれたものをバルダは必死で愛撫する。
その一生懸命な表情にリックは簡単に上り詰めていく。
「バルダ・・・もうちょっとゆっくりしてくれ。
すぐにでちまいそうだ。」
 リックの言葉にバルダは顔を上げる。
「いつでも出してくれ。お前のが、飲みたい・・・。」
 そう言ってバルダはさらに深くリックのものをくわえ込む。
いとおしそうにリックのモノを舐めまわし、タマをやさしくもんでやる。
「バルダ・・・。」
 リックはバルダの頭を撫でながら、素直に快楽に身をゆだねた。
やがて、リックにも限界が訪れる。
「・・・くっ、んっ!」
 リックはバルダの口内に大量に精液を吐き出した。
バルダはそれをすべて飲み干す。
最後の一滴まで絞り尽くすとバルダはリックの股間から顔を上げた。
2人は見つめあい、どちらからともなくキスをする。

「リック・・・ありがとう。」
 そういってバルダはリックに抱きついた。
リックは無言のままバルダを抱きしめる。
熱い視線が再び絡み合い、月明かりを受けながら2人はその場にもつれ合いながら倒れこんだ。
彼らの夜明けはまだ遠い。